卵を“使う”のと“作る”のとではぜんぜん違う!
始まりは綿貫さんの代替卵の開発構想から。そこから「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」が生まれるまでは、なんと139回もの試作が!その誕生ストーリーとは。
綿貫: 今から8年くらい前のことになるのですが、米国のスタートアップ企業がプラントベースの代替卵構想というのを発表していたんですね。地球規模の環境変化に対して自分たちの技術で解決策を図りたいという高い志だったんです。私も20年くらい研究部門にいたんですね。同じ技術者としてその考え方にしびれるような気持ちになったんです。それでこれってキユーピーでもできるかもしれないって思ったんです。
前田: そのアイデアはスムーズに実現できたんですか?
綿貫: そんなに簡単じゃなかったんですよ。社内の尊敬する大先輩に相談してみました。あの技術とあの技術を使えば多分できるよってアドバイスをもらったんです。信頼する先輩が言うならできるかもしれないと。できるんだったらやってみようと、まずは社内で研究開発のテーマに起案しました。
前向きな意見も多くて、後押ししてもらいました。
綿貫: キユーピーは卵をたくさん使っているメーカーでもあるんですけど、卵を作ったことのあるメーカーではないので、そんなことできるのか、最初は半信半疑で始まりました。
前田: 調べたところキユーピーさんは卵の使用量が日本一の企業だということなのですが、本当なんですか?
綿貫: あまり知られていないのですが、実は日本で生産されている鶏卵の約10%をキユーピーが使っています。
前田: え!?日本全体の10%ですか、すごい量ですね。
綿貫: 本当にいろいろなものに使っています。マヨネーズだけではなく、卵を加工してお届けするというのも私たちの事業の中にはたくさんあります。
前田: 卵を“使う”のと“作る”のでは全く別のことですよね。
綿貫: そうなんですよ!本当にぜんぜん違うことですし、今までそういう発想をしたことがなかったので、最初はびっくりして「エッ?ちょっと待って……」という感じでしたね。
前田: 社内の反応はいかがでしたか?
綿貫: 卵ってどこか神秘のカプセルみたいなところがあるので、そんなことしちゃっていいの?みたいな反応もありました。でも面白いかもねとか、もしかしたら自分たちが持っている技術を使ったらできるかもしれないねとか、前向きな意見もすごく多くて、後押ししてもらったなと思います。
前田: 背中を押される形で開発研究が進んでいったんですね。試作はかなりたくさんされたのではないですか?
綿貫: 「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」ができるまでは研究員が139回試作を重ねました。
前田: すごい回数ですね!
綿貫: そうなんです、やってくれた本人は本当に苦労したと思います。あの理想的なふわとろ感を目指して本当に日々一生懸命試作してくれたなと思います。
前田: そこまでしてでもプラントベースの卵というのを作りたかったんですね。
綿貫: 将来のことを考えてのことなんですけど、先ほどキユーピーは日本の卵を最も使用しているメーカーだとお話ししましたが、卵を割ってそのままお届けするということではなく、さまざまな料理やおかし、パンなどになって皆さんの食卓に届いているんですね。その一つ一つがおいしくなるように、どう卵を使えばいいのかとか、卵の魅力の引き出し方を知っているのが私たちではないかと思ったんですよね。
卵好きメーカーだからこその社内の期待が高過ぎる
「HOBOTAMA」の発表後、メディアの反響も大きく、問い合わせが多く寄せられました。当初は業務用としての商品化でしたが、「市販してほしい」という声も多く、代替卵を選びたい、必要としている人の多さに驚いたという綿貫さん。
前田: 「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」が完成した時はどうでしたか?
綿貫: 開発した本人が一番ホッとしたんじゃないかと思います。卵への愛が一番強い会社だと思いますから、社内の期待がすごく高かったなと思います。
前田: 卵好きがたくさんいらっしゃる会社なんですね。それだけに「これは卵じゃない」という声があったりして、苦労したんですかね。
綿貫: そういう評価があると、開発者は沈んだ気持ちになったんじゃないかなと。(完成した時)いよいよこの商品を日本のみなさまにお披露目できるという喜びは私の中ではありました。ただ日本にない商品でもあったので、もしかしたら見向きもされないんじゃないかなとか、ちょっと不安もありました。
どんな反響があったのですか?
早く食べてみたい!など嬉しい声をいただきました
前田: GREEN KEWPIEブランドの立ち上げは元々想定していたんですか?
綿貫: いえ、決まってなかったんです!(笑)。HOBOTAMAを出すのに精一杯でGREEN KEWPIEというブランド構想まで見えていなかったというのが正直なところです。これまで卵の楽しみ方、魅力をお客様に伝えてきた企業として、また、日本で最も卵を取り扱うメーカーだからこそ、卵を食べない、食べられないという人の気持ちに寄り添いたいというところで(HOBOTAMAは)出したものでした。大きな反響はいただいたんですけど、それだけだと卵だけになってしまうので、それでは食卓を豊かにできたとは言い難いですよね。そこでメニューが広がる、私たちの得意技でもある調味料や調理食品を発売し、プラントベースの食生活をより楽しいものにしたいということでGREEN KEWPIEは生まれました。
GREEN KEWPIEってネーミングも素敵ですね!
いくつかの候補の中で一番輝いて見えて決めました!
キャンプで食べるオープンオープンサンドイッチ
ゲストのためにGREEN KEWPIEを使った料理を食べていただく「みんなにうれしいGREEN KEWPIEレシピ」のコーナー。139回の試作を重ねた「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」を使ったサンドイッチを食べながら、HOBOTAMAの活用術についての話題に。
前田: 綿貫さんへの2皿目は題して『キャンプで食べるオープンオープンサンドイッチ』です。
綿貫: えっ?オープンオープン?
前田: アウトドア好きのスタッフがおりまして、「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」を凍ったままキャンプに持っていき、水で解凍したらそのままオープンサンドになるんじゃないかという発想から生まれました。屋根のないところで食べてほしいオープンサンドなので、オープンオープンなんです。今日はひと手間、トマトを炒めて、バジルと「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」と合わせて、イタリアンなオープンサンドにしました。こちらです!
綿貫: (拍手)
前田: こちらのサンドイッチなんですが、トマトの赤とバジルの緑、そしてHOBOTAMAの黄色がとってもいいコントラストですね。特にHOBOTAMAの黄色がとってもおいしそうです。
綿貫: HOBOTAMAの黄色味なんですけど、すごくこだわっているんです。卵の黄身って本当にいろんな色味があって。スクランブルにした時の鮮やかな黄色で料理がおいしそうに見えるかどうかが決まってくると思うんですよね。ちょうどいい色味にするために、本当にこだわっていろんな色味を試した結果になります。
前田: 一番おいしそうな色味に見えますね!さっそく食べてみましょう!
綿貫: いただきます!(モグモグ)バジルがさわやかでいいですね!
前田: トマトは炒めているので甘味があるんですが、そこにこの「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」が入ることで、ふわっとした食感になります。
綿貫: ふわとろ感も楽しめますね。
前田: 「HOBOTAMA 加熱用液卵風」という商品もあるんですよね。
綿貫: 「HOBOTAMA 加熱用液卵風」は60gなんですが、ちょうどLサイズ卵1個分で、さまざまなお料理に使うことができるのが特徴です。
前田: 私はお味噌汁に卵が入っているのがすごく好きなんですけど、使ってみたいなぁって思います。
綿貫: 溶きたま汁とかできますよ。
前田: さっそくチャレンジしてみたいと思います。
卵愛が強すぎてタマリエ社員が888人!
日本一卵を使用するキユーピーには、卵が好きすぎる社員が多数在籍。文字通り卵愛に溢れた企業なのですが、中には寝ても覚めても卵!という強者も。
前田: このHOBOTAMAからGREEN KEWPIEは始まるんですが、綿貫さんはどんな未来を思い描いてますか?
綿貫: 日本は人口が減っていく想定ですが、世界的には人口は増えていくということで、そうなると私たちの食卓に必要なたんぱく質は、このままでは足りなくなってしまうかもしれません。私自身が大好きで、私たちキユーピーが最も使っている卵も足りなくなってしまうかもしれません。将来に渡って卵を楽しむ食文化を残すというのも、私たちの使命ではないかと思うようになって、このHOBOTAMAの開発に至ったということになります。
前田: 未来にも卵が大好きなキユーピーがHOBOTAMAを届けていきたいということなんですね。会社にはやっぱり卵好きの方が多くいらっしゃるんですか?
綿貫: はい、たくさんいます(笑)。うちの社員も卵を楽しめない未来は思い描けないだろうなと思うんですけど、休日にオムライスを食べ歩いたり、卵料理でおいしいお店を見つけたら皆で食べに行くとかはよく聞く話ですね。卵のソムリエって知っていますか?
前田: 聞いたことないです。
綿貫: タマリエ※っていうんですけどね。今のところキユーピーには888人います!
前田: えーっそんなに!
綿貫: 卵の知識が豊富で卵の普及に貢献しているような人たちなんですけど、検定に合格してタマリエを名乗っている人がいっぱいいます!
前田: びっくりしました!そこまで卵愛が強いとは知りませんでした!
卵がない未来なんて考えられません!
卵愛が深すぎます!
社内の反応はいかがでしたか?